衛星追尾用2mアンテナの製作(実践編)
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前回のMMANA-GALによるシミュレーションの結果得られた諸元で図面を起こしてみました。必要となる部材については別途一覧に示すとおりです。
仰角ブームより前方にエレメントを全て配して、ブームの影響も回避します。また、Qマッチ分配器は仰角ブームへの取り付け部(リフレクターの後ろ)より後部にアンテナブームを延長する形で取り付けようと思います。
前回シミュレーションによる図面
参照:JA1CPA/中村英冶氏の
「04. 少し本格的な衛星通信用アンテナ」
構成部材の調達
- アルミ角パイプ 20mm x 20mm x 2mm厚
長さ 2m x 1本 長さ 1m x 1本
- アルミ角パイプ 15mm x 15mm x 1.5mm厚 長さ 1m x 1本
(16角がベスト 無かったので適当なアルミLアングルを合わせた)
- アルミ丸パイプ 5φ 1m x 10本(ディレクタ、リフレクタ)
- 真鍮丸パイプ 5φ 1m x 2本(ラジエータ)
- 配線クリート(右図) 1袋(100個入)
- クリート取付け用 ステンレス皿ビス 4mm x L:25mm 10本
- 給電部クリート取付け ステンレスボルト 4mm x L:20mm 2本
- エレメント用エンドキャップ赤・
黒(お好みで)
- クロスマウント
最終取付けた結果としてもう少し大きくてボルト径も太くて上部な物が安心できる。
- NPコネクタ x 3個と
8D-FB(給電点からQマッチまで2本含む)
無線機側は機器に合わせてください。
- Qマッチ分配器部 NRコネクタ x 3個 と
5C-FB x 1m
アンテナブームの延長
通常DIYセンターへ行くと2mもののアルミパイプしか取り扱っていません。
業務用としては鋼材屋さんなどに行くと4mものが有ったりしますが、トラックが無いと購入も現実的ではありません。
そこで、上記リストのように2mの20角(厚み2mm)に1mの20角を
継ぎ足して3mにして使用します。
接続部分の内径に合った16mm角があると良かったのですが、15mm角しか無かったので1mm厚のLアングルを挟んでロックしました。
差し込むときズレないように、アングルを15mm角に瞬間接着剤で固定してから挿入しました。
差し込み代はそれぞれ200mmです。
当初(図面では)リフレクタ側で延長しようとしていましたが、先端側のほうが継ぎ足し部にかかる重量が1m分で済むため上記差し込み代としました。
リフレクタ・ディレクタの取付け
ブームが延長できたら図面の寸法に従って
4φのビスがしっかり固定できる程度の穴開けをします。
さらに
直交する他の面に20mmずらして同様に穴開けをします。
注意を要するのは、ラジエータ部の穴開けです。固定用プレートが幅広となるため、直交するプレートが干渉します。
従ってこの部分だけ穴開け位置を、配線クリートが向かい合った状態で20mm離れる位置とします。
(
PDF図面の給電点を拡大すると様子が分かります。)
この配線クリートの溝と5φエレメントは、前もって咬み合わせを確認しておいたので、取付けはいとも簡単に出来ます。
もっと細いエレメントを使用する場合はビス穴の反対側を使用することも出来ます。
ラジエータの取付けと給電点
まず
幅25mm 長さ60mm のラジエータ固定用のベースプレートを2枚作成します。
2mm厚のアルミ板を加工しましたが、アクリ版・プリント基板などでも代用できると思います。
20mm後方に取り付けるラジエータについては、他のリフレクタやディレクタと同方向に配線クリートが向くようにして、所定の場所にビス2本で固定します。
前方につけるラジエータは、エレメント間隔が20mmなので、同方向に取り付けると干渉してしまいます。
そこで、エレメント間隔を維持しながら配線クリートは後ろ向けに取付けます。(
配線クリートを向い合せに取り付ける)
設計上ラジエータの長さは 952mm です。そこで
5Φ真鍮棒を長さ475mmにカットしたものを2本作り、給電点を 2mm 空けるようにします。
微妙な調整は、この間隔を変えたり、エレメントを実際にヤスリで削ったりして行います。
給電用リードケーブルと位相変換
給電用ケーブルには今回
8D-FB を、アンテナブーム最後部に取り付けるQマッチ分配器に余裕を持って届く長さ(任意)分使用します。
ただし、位相を90°遅らせる方のケーブルは 1/4λ長くします。
分配器(ほぼ50cm長)については、ブーム最後部にブームを延長するような形で着けようと思っているので、ケーブル長さ的にはぴったりではないかと思います。
ここで一応ケーブルの 1/4λを計算しておきましょう。まず
8D-FB の波長短縮率はググってみると80%です。
\[
l=\frac{λ}{4}×0.8=\frac{300}{4×f(MHz)}×0.8=\frac{300}{4×145.8}×\frac{8}{10}=0.4115226(m)
\]
300,000km(光・電波の速さ)なので周波数を145.8MHz(145800kHz)で表示したのに合わせると300となり、上記の結果となります。
この意味は、
2本のケーブルを作るとき、長さは適当で良いのですが必ず 412mm の差を設けるということになります。
Qマッチ分配器の製作
「Qマッチって何だろう?」と調べてみたところ、1/4λの同軸ケーブルを使ってインピーダンス変換をするので
Quarter Match の略だそうです。
Qマッチ分配器にはインピーダンスを合わせるために 75Ω の
5C-FB を使用します。
波長短縮率は 80% です。
つまり、前述の
8D-FB と同じ結果となり、
長さ 412mm の 5C-FB x 2 作成することになります。
ただ問題がいくつか残ります。1つ目は最も基本的なものですが、そのまま流用させて戴いている JA1CPA 中村OM のサイズが 348mm なのです。
2つ目は、理論上の 1/4λ は実際にはシース(黒または灰色の被覆)部分か、又は外部導体(アルミ箔、網線)先端か、はたまた内部導体(芯線)なのかと言うことです。
これは、もう
実験しか方法は無いということで、
長め(シース部分が 412mm)の物を2本用意して、実際に測定することにしました。
実際にはシースより先、網線 10mm + 芯線 4mm ×左右で 28mm 長い
440mm にカットしたケーブルを2本用意します。
10mm幅、0.5mm厚の銅板です。センターR部分は外部導体はんだ付け(テスト時は少しカシメるだけ)
テスト環境は、
アルミアングル(1mm厚、30mm幅、320mm長)に3箇所、
MRコネクタをボルト止めし、
2本のケーブルを
銅板で作った金具で仮止めします。
両端のコネクタには 50Ωのターミナルを取付けます。
5個セットを買ったのですが、内1個は全くダメで他は50~52Ωくらいのバラ付きが有りました。
センターのコネクターには SWRやインピーダンスが測れる器具を取付けます。
図は NanoVNA と NanoVNA Saver をインストールしたタブレットですが、データを保存しなければタブレットやPCは不要です。
- 黒い被覆(シース)部分が 412mm、網線部 10mm、芯線 4mm (全長 440mm)
クリックすると
拡大します。
- 網線部(10mm)を含めて 412mm、芯線 4mm (全長 420mm)
クリックすると
拡大します。
- 芯線の先端から他方の先端まで全長 412mm
実際にはんだ付けする場合は、MRコネクタ中心から中心で 412mm になるよう調整してください。
クリックすると
拡大します。
結果として、
Qマッチ部 5C-FB(周波数短縮率 80%)の全長は芯線長(コネクタセンター)で 412mm とします。
ケーブルが寸法どおり出来たら、先ず長さ 10mm の網線部に、同じく幅 10mm の銅板金具を半田付けします。
ネジで金具を固定してから芯線をコネクタの芯に半田付けすると確実に出来ます。
完成後は、コネクター周りに給電点と同様の雨水対策を施します。また実装するときはアンテナブームの後端に適当にビス止めします。
従って、給電用リード線はこのそれぞれのコネクターに届く長さとなり、位相変換の長さの違いでうまく長さも合うと思います。
各部位に於けるインピーダンス・SWR測定
左図はアンテナとQマッチ分配器を接続したものです。NanoVNAがスタック後の最終段階に接続されていますが、これを
C点とします。
また、リードケーブルの短い方のコネクタ部を
A点、90°位相遅れの長い方を
B点として測定結果を掲載します。
私の場合、分配器への長さ合わせで適当に切ったケーブルとそれより
412mm 長いケーブルでたまたま無調整で下記結果となりましたが、
本来は、勿体ないですがカットアンドトライすべき所です。
無難なのは、上記計算結果の
412mm × n と
412 × (n + 1)だと思います。
- A点
クリックすると
拡大します。
- B点
クリックすると
拡大します。
- C点
クリックすると
拡大します。
6エレメントクロス八木の実装
2022年8月19日完成です。
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